邦楽舞踊を知るほうがくぶようをしる

小唄が伝える「粋(いき)」の文化
花菱 は満潮 邦楽としての小唄は江戸時代中期に好まれた端唄(はうた)を母体とし、明治時代に清元お葉の作曲したものが純粋な小唄の起源だと言われています。小唄には清元の一部を取り入れた清元小唄や歌舞伎などを題材にした芝居小唄など様々な種類があります。これまでに2千曲以上の小唄が作曲され、現在も「粋」の文化を発信し続けています。
 小唄は長唄などと比べ、曲の長さが1~5分程度と短いのが特徴でもあります。邦楽に興味を持った人が入りやすく、三味線の音色や唄、人前で披露する緊張感を味わうことができるのが小唄の魅力の一つではないかと思います。
 私は23歳から小唄を始めました。誘っていただいた方から「最初の3カ月はやり通してみなさい」と言われ、毎日のように通いました。それも師匠や先輩方が奏でる軽妙な三味線の音色に合わせて、さらっとした江戸言葉で唄う小唄にひかれたからです。
 多様なジャンル、曲数がある小唄の中でも私は歌舞伎の名せりふやストーリーを題材にした芝居小唄に強い魅力を感じます。見る方に伝わる芸をするためには、題材を勉強する必要があります。日本文学の古典を学ぶたびに自分の芸の幅を広げることができると感じています。
 小唄「曽根崎心中」をラジオ放送で披露することになったときには題材になった歌舞伎を見に行きました。それ以来、観劇は趣味の一つになっています。これも小唄の結んでくれた縁だと感謝しています。
 私が弟子を取り、人に教えるようになってから60年近くになります。自分が小唄を聞いたときの感動を多くの人に体験してもらいたい、伝統文化を継承していきたいとの使命感を持って続けてきました。これからも小唄の技と心を伝えていきたいと思います。