邦楽舞踊を楽しむほうがくぶようをたのしむ

まず邦楽器のよさ知ろう

邦楽舞踊を習う
まず邦楽器のよさ知ろう
駒井 邦夫 「邦楽」というと固いイメージがあるためか、その言葉を聞いただけでアレルギー反応を起こす人が多いようです。私がNHKにいたころ、伝統芸能の番組名から「邦楽」という字を消し「芸能花舞台」としたところ、今年3月まで約23年間続く長寿番組になりました。
 今の日本では、邦楽は映画のように道を歩いていて出くわすもの、通りがかりの人間が気軽に入って楽しむことができないことも、邦楽離れの原因と思われます。邦楽に親しむことが、邦楽を楽しむ第一歩です。
 私は京都の花街で生まれ育ちました。もし女性に生まれていたら、踊りの名人になっていたかもしれません。それぐらい邦楽は身近なものでした。それでも、30分以上にわたる長い曲を聞くのは苦痛に感じるときがあるのです。また、歌詞は古語で書かれているため、慣れないうちは理解が難しいでしょう。東京では邦楽の公演で、舞台横に字幕を映す所もあるぐらいです。その上、内容を理解するには背景にある古典作品の知識を求められます。外国の映画を字幕なしで見ると、言語を理解できない人は内容がわからなくなるのと同じで、わからないものを楽しむことはまずできないでしょう。
 そのため、まず邦楽で使われる筝や尺八などの楽器、「邦楽器」に親しむことをお勧めします。楽器は言葉と違って万国共通のものです。近年は若い津軽三味線や尺八の奏者も増えてきました。彼らの奏でる音楽は現代的な曲調で演奏時間も短く、西洋の音楽に慣れた人にも親しみやすいでしょう。邦楽器というと優雅な音色を想像する向きも多いかと思いますが、奏法によってさまざまな音色を出すことができるのです。特に三味線は、たった3本の絃しかない楽器ながら、実に豊かな音の世界をつむぎだします。邦楽器は西洋の楽器に勝るとも劣らない魅力を持っているのです。